原題：the sender
本編時間：92分
制作年：1982年
制作国：イギリス
監督：ロジャー・クリスチャン
脚本：トーマス・ボーム
音楽：トレヴァー・ジョーンズ
出演：キャサリン・ハロルド シャーレイ・ナイト ゼリコ・イバネク
紹介：
夢や意識を直接、他人と共有できればそれはどんなに素晴らしいことだろう。しかしそれが相互ではなく一方的なものだったら…。
『ザ・センダー』は自身の脳内ビジョンを他人の脳へ送信（send）できる超能力者を描いたホラーである。相手の意識を読み取るのではなく、自身の意識を一方的に相手へ送りつける。悪夢や幻視さえも（この能力を持つサイキック青年は力をコントコールできず無意識にヴィジョンを他人へ送りつけてしまう）。自分のことを他人に知ってほしい、本当の自分を分かってほしいと欲する感情は誰にでもあるはずだ。だが、欲望やトラウマも含めた己の全てを相手に知らせる（知られる）ことは、もはや恐怖ではないのか。そんなことが本当の意味での"他者へのコミット"、"相互理解"と呼べるのだろうか。人は複雑怪奇な生き物だ。互いに理解を深める為、言語は発達し、人間関係の奥ゆかしさも生まれた。精神医学や脳科学の進歩に伴い、人の中へ中へと分け入っていく現代であるが、今一度、"理解できない故の、畏敬の念を持った他者とのコミット"を考えるべきだろう。バカみたいなビデオジャケットに騙されてはいけない。『ザ・センダー』はとても深い映画である。監督のロジャー・クリスチャンは後に『ノストラダムス』『バトル・フィールド・アース』という赤点映画を撮ってしまうが、本作では人心の繊細さをサイキックホラーというジャンル風味で語る、才を放っている。シリアスな展開の最中、生首の吹っ飛んだ胴体がウロウロ動き回るユーモラスな幻覚シーン等、ショックを求める観客へのサービスも忘れない。