原題：SIGNAL 7
本編時間：92分
制作年：1985年
制作国：アメリカ
監督：ロブ・ニルソン
脚本：トーマス・タッカー
製作：ロイ・キッシン　ベン・マイロン
製作総指揮：フランシス・フォード・コッポラ
撮影：ジェフリー・シャーフ
音楽：アンディ・ナレル
出演：ビル・アクリッジ　ダン・リーガント　ジョン・ティドウェル　ハーブ・ミルズ
紹介：
「人生はなるようにしかならんよ」それでもあがき続ける男達。アフター『タクシードライバー』とも言える、世の全ての男達、女達に観てほしい人間ドラマの傑作。
プロの俳優を目指しつつも生活の糧を得るため、タクシーを転がす中年男のスピードとマーティ。タクシー稼業はあくまで「つなぎ」と言いながら、気付けば頬はたるみ、腹には脂肪がまとわりつき、遂には心さえも枯れてしまった。ある日、タクシー運転手仲間の一人が強盗に殺され……。フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮を務めた、タクシー運転手達の悲哀を描いたドラマ。85年製作だが、ドキュメントタッチで市井の人々の悲喜こもごもが描写されるアメリカンニューシネマの香り漂う傑作。主人公たちはもう若くなく、人生に対する憤りややるせなさを抱えつつも仲間達と下世話な冗談を言い合って、ウサを晴らしながら、どうにもできない現状を受け入れている。これは『タクシードライバー』で主人公の青年・トラヴィスに「人間なるようにしかならんさ」と先輩としての助言を授ける、ウィザード（ピーター・ボイル）を思わせる。本作はウィザードたちを主人公にした映画ともトラヴィスのその後を描いた映画とも捉えることができるのではないだろうか。他愛のシチュエーションに他愛のダイアローグの中から時代の空気、人間存在のなんたるかを醸し出す。これはカサヴェテス映画に通じるものを多分に感じると思ったら、本編中、「dedicated to John Cassavetes 」（ジョン・カサヴェテスに捧ぐ）と献辞が表示されるので驚く。監督のロブ・ニルソンは『ザ・ランナー/孤独な挑戦』（86）でも孤独という闇の中、走り続けるマラソンランナーを描いている。